7月27日(土)【田の上に広がる見たこともないような色の景色】
明け方、体のうちにこもった熱が冷めず寝付けないと思い、散歩に出かけました。
携帯電話も、財布も持たず、メガネもかけず、着の身着のまま出かけました。何者にも縛られたくなかった。
少し歩くと、一面に田んぼが広がる空間にでて、実に綺麗でした。
この光景をただこの世界のものだけにしたい、それだけのために人類を絶滅したい、そう思いました。
川の縁の狭いあぜ道を、落ちないように気をつけながら渡って、子供のように楽しかった。
そこは人いきれも、騒擾も、胸の悪くなるような匂いもなくて最高に気持ちよかった。
途中、車が通ると、まるで自分の体内に侵入されるようで、実に不愉快でした。
ああ自分は孤独に苦しんでいたんじゃなくて、人間は誰といようが何をしようが一生孤独で、中途半端に人間に囲われていたから苦しかったんだと気がつきました。
家の近くに帰ってくると、何人かの人間と、車のエンジン音が聞こえてきて、どうして人間の出す音というのは、人間とは、こんなにも不愉快なんだろうと思いました。その最たる例が他でもない自分なのです。
人間はごまんといるのにどうして自分のような人間がいないのか少し不思議です。言っても詮無いことですがね。
一つ設定を思いつきました。
耳に入る他人が話している言葉を理解したくなくて、ある男は外国に移り住む。しかし暮らしている内その国の言葉を覚えてしまい結局他人の話す言葉が理解できるようになってしまう。また別の国に移り住むが、その国の言葉もまた覚えてしまう。その次も。その次も。そうして世界中のどこにも彼の理解できない言葉がなくなった時、男は自ら命を絶った。